2007年11月1日

中国医薬品原料の舞台裏

中国の業者が毒性のあるエチレングリコールをグリセリンと偽って輸出したために、それを原料として作られたかぜ薬によって、パナマを始めとして世界中で死亡者が出た事件について、以前ここでも取り上げましたが(参照記事)、その続報がThe New York Timesに載ってました。

特に目新しい情報はありませんが、どうして今回このような事件が起きたかについて考察しています。

5月のスクープ記事でも少しだけ触れられていましたが、なぜ中国政府はこうした偽モノを取り締まれなかったのでしょうか?

中国でも製薬会社は医薬品の出荷に関してFDAによる検査が法律で課せられていますが、化学製品会社にはこの法律は適用されないそうです。このため化学薬品製造会社が医薬品の原料を作って輸出する分にはFDAの検査は要らないわけです。

例えば、グリセリンも医薬品の原料になるものから、普通の工業用として使われるものまで色々とあるわけですから、一般の化学工場から出荷された場合、それが医薬品用の基準を満たしていない場合もあるわけです。

結局製薬会社から仕入れるよりも一般の化学工場から仕入れたほうが原価が安く上がるので、それを利用する人が多いのでしょう。

90年代半ばに起きたハイチの事件でもこうしたザル法への批判はあったようですが、結局そのまま放置され、今回も同じ事件が繰り返されたというのが真相のようです。

今回のNYTの記事は中国に批判的な論調ではなく、どちらかというと中国の政府に同情的で、今後の課題として問題をまとめた感じでした。

この辺は弱みを見つけたら徹底的に叩く日本的報道と違って(誰とはいいませんがNYTにもそういう記事書く人がいますけどね)、今後の取材でも中国側の協力を得やすい関係を作ろうとしているんだろうなぁと感じます。

もちろん被害者の救済も大切ですが、同じ過ちを繰り返さないためにも、感情論に走らず、徹底して事実や原因を追究し、そこから具体的な改善策を提案することも、報道に課せられた重要な使命だと思います。

あっぱれNYT!

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