2008年2月16日

またもや大学で銃乱射事件

2月14日バレンタインデイに起きたイリノイ州北イリノイ大学(Northern Illinois University)での銃乱射事件。昨年4月に起きたヴァージニア工科大学での事件の記憶がまだ消えぬうちに同様の事件がまた起きてしまいました。ニュースを調べているとこの2つの事件には類似性があるように感じます。

1.学生による犯行

今回の犯人は正確には元在校生であって、去年大学を卒業し現在は別のキャンパスにある大学院に通学していました。大学院では社会福祉学を専攻しており、「人間行動学と社会環境」のクラスをとっていました。しかし入学後すぐの9月に刑務所での職に就くために休学し、その後その刑務所ではわずか15日だけ勤務したあと突然辞めています。そして今年1月になって復学していたそうです。


2.犯人は普通の学生

ニュースではことさら賞を取るほどの優等生だったことが強調されていますが、いわゆる"B Student"だったようです。特に過去に社会生活の中で問題を起こした生徒ではなかったことは確かなようです。


3.メンタルクリニックに通院歴がある

犯人であるSteve Kazmierczak(27歳男性)は高校時代に1年以上Thresholds-Mary Hill Houseというリハビリセンターのようなものに入所していたようです。自傷行為があったみたいです。高校卒業後にも通院し服薬は続けられていたようなのですが、本人は自分が病気であることを知られるのを極度にいやがり、服薬もしたがらなかったようです。

(ソースはすべてUSATODAY.com、タイトルをクリックすると該当記事が開きます。注:なんか記事を書いている間にリンク先の記事の内容が変わってしまったみたいです。こういうこともあるんですかね?)

銃乱射事件は、精神異常状態にある人物によるものが多く、前回や今回のように学生が犯人であった場合、それがオンキャンパスで起きる可能性が高いということです。

これまではこのような事件の場合、精神異常状態に陥る原因の多くは、薬物乱用だったりしたわけですけど、今回続けて起こった事件ではともに精神病患者だった点に注目できます。いずれも学校側では異常を察知できなかったと述べていますが、彼らの行動を後からみれば全くの正常だったとはいえないようにも思います。この辺の判断は難しいですけど。だからこそこういう事件が起きてしまうんでしょうし。

イリノイ州の場合、本来過去5年以内にメンタルケアを受けたことのある人は、銃を手に入れることはできないことになっているのですが、ライセンスの発行はあくまでも自己申告に基づいて行われているようで、このため今回の犯人は通常の手段で銃を購入できたみたいです。 本来規制がきちんと適用されていれば、彼は銃を手に入れられなかった可能性が高かったわけですが、こうした精神病院などの通院歴の情報を誰もがアクセスできるシステム上でシェアすることはプライバシーの観点からなかなか難しいことです。また病状のどこで線を引くかも難しい問題です。

早速オバマ氏が今回の事件から銃規制を大統領選に持ち込んだようですね。具体的な案は語っていないようですけど興味深い動きです。どんなアイディアが出てくるのか楽しみですね。

私が考えた簡単に出来そうな一つの規制は「学生には銃を売らない」ことです。もちろんこれまでにも同様の議論はあったと思いますが、2つの事件に共通する上記の1と2の問題はこれで解決できます。さもすれば差別や人権問題に発展しやすいデリケートな3の問題を解決するよりはずっと簡単のように思えます。

問題はどうやって「学生でないことを証明するか?」ということですけど、これは逆の発想をすればよいだけです。つまり学生に学生であることの登録を義務付ければいいのです。入学条件に「銃を購入できない人リスト」に登録することを加えればいいだけです。これをソーシャルセキュリティーなどのネットワークシステムに情報として登録しておけば銃販売店からもオンラインで照会できるようになります。学生であることを公にされて困る人はあまりいないでしょうから、反対もそれほど強くないでしょう。

大学(高校)は入学するものを思想などによって差別してはいけませんが、学校の安全を図るためであればこうした入学条件は正当化できると考えられます。逆にそうした制度が出来れば、条件を課している大学(高校)を選択する人のほうが多くなるのではないでしょうか?

もちろんそれでもキャンパスに銃が入り込むことは止められませんが、少なくとも今回および前回の事件は未然に防げた可能性が高いと思います。裏社会から流れる銃は販売する側もそれなりにリスクを負っているわけで(足がつくと自分が困るため)自然と買い手側を選ぶものです。 精神不安定な状態にある人が、思いついたその場で手に入れられるほど簡単ではないと思います。

そして時間はかかりますけど、その後制度を取り入れた学校と取り入れなかった学校を比較して、どちらが安全かを検証すればよいと思うのです。

銃が存在する限り銃を手に入れる方法はいくらでもありますけど、こうした規制を連邦政府が学校側と協力して導入するだけでも、今回のような事件が起きる確率はぐっと抑えられるような気がします。


余談

関係ないですけど、犯人はポーランド系の苗字ですね。シカゴ(イリノイ州)にはポーランドからの移民が多く住んでいます。話によるとポーランドの首都ワルシャワよりも人口が多いらしいです。そんなわけでポーランドの本当の首都はシカゴだなんていっているポーランド人もいます。USATODAYによるとKazmierczakは英語では「カズマーチェック」と発音するみたいです。日本のニュースでは「カズミエルチャク」で報道されてますね。また大学からは最初"Stephen P. Kazmierczak"と報道があったようですが、"Steven Kazmierczak"となっているニュースが多いです。

それと彼は高校時代に日本語を学んでいたそうです。また一部の政治家は今回の事件もテレビゲーム(シューティングゲーム)と結びつけて論じていますが、この辺どうなんでしょうね?日本に興味を持っていたということは、前回の犯人同様ゲームマニアだった可能性もありますけど、関係ないのではないでしょうか。犯人は短期間ですがアーミーにも入隊していたこともあるそうです。

「女性に振られた」というのも前回同様動機のひとつに上げられてますけど、そんな理由で無差別殺人なんかするもんなんですかね?

あと一部で坑うつ薬(プロザック、SSRI)との関係も指摘されていますが、この辺も実際のところよくわかりません。仮に副作用による錯乱・興奮状態が原因だとしたら、この薬の服用者の数からいってもっと多くの事件が起こっていても不思議じゃない気もしますし。タミフルの副作用でも感じましたけど、このあたりはもっと調べる必要がありそうです。向精神薬の作用・副作用も今後は小児・若年(青年)・成人・老年で分けて検討する必要があるのかもしれません。

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